あのね、先生。

ふと時計を見ると、約束の時間から10分が経とうとしてた。

時間が過ぎたって良かった。

あたしはちゃんと、ここで優真を待ってるつもりだから。

だけど、長袖を着てるからやっぱり暑くて、優真が来るまでそれを脱いでおこうと思った。

ちょうど、それと同じくらい。


「茉央っ」

「あ…」

優真が駆け寄ってくる。

「ごめん、遅れて」

謝らなくてもいいのに。

だって、優真ここまで走ってきてくれたんでしょ?

息を切らしてる彼の姿を見れば、そんなことはすぐに分かった。

「ううん、全然いいよ。あたしもさっき来たとこだから」

むしろね、先に優真が来てたら、何て話を切り出そうって、ちょっと考えてたから良かったの。

優真はあたしの隣に座って、カーディガンで覆われた腕を見た。
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