あのね、先生。

「誰に遠慮してるの?俺茉央ちゃん以外に家に入れる女の子いないからね」

「…ほんとに?」

「うん、ほんとに」

何だ、心配してたのはこれか。

俺に新しい彼女がいるんじゃないかって。だから家に入るのを躊躇った。

あのときみたいに笑えば、茉央ちゃんは安心したように歩みを進めた。


「雨、すごかったね」

「うん、びっくりしちゃった」

久しぶりに会って、こんな風に隣を歩くことさえ許されないはずなのに、あの時に戻ったみたいだった。

触れることなんてもうないと思ってたのに、こうして手を繋いでる。

普通に会話が出来てる。

それだけで何かもう、胸が痛いくらいに締め付けられて。あのときの自分に言ってやりたかった。


ずっと茉央ちゃんが一番大事だって。

だから手放すなって。
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