誤解から始まる恋もある?
金城副支配人に勧められ、運ばれてきたにんじんのしりしりに手をつける。

しりしりとは私の好きな沖縄料理で、千切りのにんじんと卵を炒めて醤油で味つけしたシンプルな家庭料理。

「夕樹菜ちゃんって、可愛いよな。うん、我がホテルで群を抜いて可愛いし、うちの奥さんよりもね」

口に入れたばかりのにんじんと卵をぶはっと吹きだしそうになる。急いで口に手をやり、金城副支配人をまじまじと見ると、彼はニッコリと笑って茶色がかった瞳で見つめ返してきた。

「副支配人? どうしたんですか?」
「夕樹菜ちゃんが好きなんだよ」
「えっ!?」

思いがけない告白に、椅子から立ち上がってしまった。ガタッと大きな音を響かせてしまい、他の客からの視線が痛い。戸惑いながらすぐに座り直す。

どういうこと? なんで? どうして?

薄暗い照明の中、彫りが深い顔立ちでじっと見つめられると背筋に寒いものが走る。

「夕樹菜ちゃんも俺のこと、好きでしょ?」
「き、金城副支配人っ!」
「ふたりきりのときは真人って呼んでよ」

テーブルの上に置いていた私の右手が、彼の色黒の左手に包み込まれる。

< 13 / 18 >

この作品をシェア

pagetop