誤解から始まる恋もある?
呆れてなにも言えないまま彼を凝視していた。

言葉が出てこなくて、いろいろと今後のことが脳裏をよぎる。

断ったら……ホテルでの仕事ができなくなるってこと……?
ありえないでしょ。優しく親切だと思っていた近所のお兄ちゃんがそんな人だったなんて!

「夕樹菜ちゃん? もう立派な大人なんだから、言っていることわかるよね? それに、うちのホテルに入社できるのも俺の口添えがあったからだよ」

……もう限界っ! セクハラで訴えてやる!

ズキズキと疼く右手を思いっきり引き抜こうとしたとき、突然その手をパッと放された。彼が慌てて立ち上がったのだ。

どうしたのかと見上げると、酔っぱらって重そうな目蓋を無理に大きく開こうと瞬きしている。

「す、須藤専務!」

彼は私の背後にいるらしい人物の名前を呼んだ。どうしてそんなに慌てているの?

「沖縄料理がおいしいと聞いて来たんです。副支配人は奥様とデートでしたか」

後ろから響いたのは、どこかで聞いたことのある声だった。低くて深みのある……あっ!

昼間のイケメンの顔を思い出した。どうやら私を金城副支配人の奥様と勘違いしているようだ。


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