私に恋をしてください!
「部長、会議に行ってください!私はこの措置が終わり次第、行きますから」
『いや、このまま措置をいい加減にしていると痕が残るぞ。会議のことは私に任せて、君はしばらく冷やしてなさい』
『申し訳ありませんでした』

若い男性は茂木部長にそう言うと、部長は急いで会議室に入って行った。

『スーツ、弁償させてください』

若い男性に連れられ、医務室に来た私。
医務室と言っても、今日は午前中しか産業医がいないらしく、今は私達2人だけだ。

冷凍庫に入っていた保冷剤で改めて冷やしている。

若い男性は、おもむろに名刺を私に差し出した。

「ありがとうございます。片手ですみません」

左手で名刺を受け取ると、そこには

【首都出版販売株式会社 首都圏営業1部1グループ 柳井 空】

給湯室から自分のために入れたコーヒーを持って出会い頭に私とぶつかったわけだから、当然首都出版の社員であることは間違いないよね。

「やない、そら、さんですか?」
『はい』
「綺麗なお名前ですね」
『綺麗?初めて言われました』

私も慣れない左手で鞄から名刺入れを取り出すと、柳井さんに渡した。

『すみません。貴方の営業には関係ないであろう僕に名刺をいただけるなんて』

真っすぐ私を見た柳井さんは、恐らくまだ社会人としては経験が浅いことの感じられる童顔な顔つき。
でも、そこにはどこか自信に満ちた表情にも見えた。
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