私に恋をしてください!
「恋というのは片方がするだけでは成就しませんし、マンガの世界だってハッピーエンドにはなりませんよね。だから貴方も、僕・・・いや、俺という男を好きになる努力をしてください」
『は、はい』

すっかり冷めてしまったランチを頂き、食後のコーヒーを頂く。

「ここに俺を呼んだのは、恐らく俺を男として見ていないからだろうな」
『そ、そうですかね』
「そんな警戒心がないのに、よく今まで無事に来られたね」
『門限が厳しかったのが、幸いしたのかも知れません』

彼女が飲むのは、ホットティー。
コーヒーは苦手なのだそうだ。

「その敬語はまずやめようよ、ハ・ヅ・キ」

俺も若干の照れがあって、わざと強調するように呼び捨てにしてみた。

『う、うん』
「ちなみに俺も今年の新入社員。ただし浪人をしているから葉月より1つ上の24歳」
『そうなんだ』
「この後は、何か予定があるの?」
『特にない・・・です、よ』
「それなら、これからデートしようよ。お近づきのシルシに」

こうしてこの時、俺と葉月の奇妙なきっかけからの関係がスタートを切ったんだ。
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