私に恋をしてください!
『遅いよ、健吾さん』
『部下が帰れないと俺も帰れないの。お前だって社会人になったんだから分かるだろ?』

そう言うと、健吾さんとやらは俺の前の座った。

『あ、紹介するね。お前の目の前にいる人は成瀬川健吾さん。今日お呼びした"セミプロ"だよ』
「成瀬川、さん?健吾さんって・・・あ、剛さんのお兄さん?」
『そうだよ』
「あ、あの、柳井空と言います。陸とは、大学の同級生です」
『知ってるよ』

初対面のはずなのに、何故俺のことを知っているんだ?
陸か剛さんから聞いたのかな。
それにしても、随分なご挨拶だ。

『今回は義弟の余計なお節介に巻き込んでしまい申し訳ないね』
「義弟って、誰のことですか?」
『俺だよ』

そう言ったのは、陸。

え?
目の前の御曹司と陸って義理の兄弟?
と、言うことは・・・えっと、剛さんは神戸と結婚したし、神戸は確かひとりっ子。
成瀬川家って確か4人きょうだいだから・・・そのあたりか?

『陸の姉ちゃんが、俺の妻』
「あ、そうなんですか」

とりあえず反応はしてみたけど、そうか。
健吾さん自身が結婚していることを想定しなかった。
キャパ狭いな、俺。

『でも訳あって、世の中には内緒なんだよね、健吾さんが姉貴と結婚していること』
「え、何でですか?」
< 89 / 216 >

この作品をシェア

pagetop