玲汰、知ってる?
■「玲汰」




週末が終わって月曜日の学校。莉緒は今日も普通に俺を電話で起こして、そのあと自転車で迎えにきた。

「おはよ」と寝癖ひとつ付いていない普段どおりの姿で、力強く学校までペダルを漕いでいく。


遊園地での出来事があって、莉緒の病気のことを知った夜。俺なりに脳腫瘍について調べてみた。

実例は様々で病気を克服して元気に暮らしてる人もいるし、莉緒が言っていたとおり良性ならば手術はしないで薬だけで様子を見る人もいる。


危険な病気じゃない。

それでもやっぱり調べた中には悪い例も書いてあって、その病気に莉緒がなっているなんて、まだどこかで信じられない気持ちのほうが強かった。


きっと病気の症状でツラい日もあったと思うけど、そんな顔は一切しないし、今だってそう。

俺は触れらそうで触れられない、こいつの大きすぎる背中を見つめるだけ。
 
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