狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

Ⅺ―ⅰ 王の力に対抗できるのは…


「順位が低かろうが、その力に対抗できる人間はいない。王の力に対抗できるのは王だけだ。力試しなんて絶対に考えるなよ」


「教官…あなたは一体…」


徐々に低くなっていくブラストの声に何か危機感のようなものを感じる。一体この男は何を知っているのだろうと、アレスは考えずにはいられなかった。


やがて漆黒の門の目の前にたどり着いた彼らは息を飲んだ。
その風貌はまるで黒塗りの棺のように冷たく、重々しい空気をはらんでいたからだ。


そして、わずかに開いた門の隙間から差し込んできたのは月の光のようで…先頭のアレスは大幅に予定を狂わせてしまったと内心焦ったのだった。


拳をきつく握りしめ、吸血鬼の国の門をたたく。
すると、内側から人の気配が近づき…



―――ギィィ…



重厚感のある巨大な扉が音を立てて開いていった。



カツン…


ヒールの音を響かせるようにして現れたのは黒い外套に身を包んだ、妖艶な美しい二人の男女だった。


彼らの鋭い瞳は狼の目のように蒼白く、不気味に光り…耳はやはり人間とは違い鋭利にとがっているように見えた。そしてやけに赤い唇がゆっくり開かれると…


「…獲物が自らやってくるとはな…」


「ふぅん…その姿は悠久の人間ね」


二人はアレスの全身を舐めまわすように見渡し、チラリと赤い舌を覗かせる。なんとも色気のある動作だが、その気配は殺気にも似たゾクリとする不気味なものだった。


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