狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

Ⅻ―ⅳ 死の国・冥王の存在



「冥王の神具は大鎌だ。他の王は普段神具を召喚していないが、ここの王は常にその鎌を手に持っているって話だ」


表情を強張らせたカイがゴクリと生唾を飲み込む。

「大鎌…?まるで死神みたいじゃねぇか…」

この世界では王こそが絶対で、神の存在はまた別ものとして考えられている。人の世界でいう"困った時の神頼み"なるものも存在していないといっていいだろう。

「言っただろ…魂を狩られるってな」

いつも笑いを含ませるブラストの顔には今は微塵の冗談の欠片もなく、冷や汗をかいているようにも見えた。その様子から彼もひどい緊張状態だということが痛いほど伝わってくる。

(…キュリオ様を疑うわけではないが…そんな相手にこの加護の灯は有効なのだろうか…?)

アレスはその事が気がかりでしょうがない。しかし、第二位のキュリオの上に立つのは第一位の精霊王だけのはず。


(そうなると冥王は第三位…?)


目の前にそびえ立つ靄(もや)に包まれた仄暗(ほのぐら)い扉は、まるで人目を避けた場所に建てられた禁断の扉のように見えてくる。そしてよく見ればその靄は内側からとめどなく流れ続け、冷気が渦を巻いているようだった。



< 126 / 871 >

この作品をシェア

pagetop