狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

Ⅻ―ⅴ 死の国・冥王の存在


「教官…ヴァンパイアの王のもつ二つ名を伺っておりませんでしたが、先に冥王の別名をお聞かせ願いますか…?」


普段のアレスならば経験に基づいて順を追った説明を求めたかもしれない。しかし、今はすぐ傍に彼の住む国へとつながる門があるのだ。

「ああ、先に冥王の別名を教えておこう」


「…彼のもつ二つ名は…<心眼の王>だ」


「心眼…」


(心の目によって真実を見抜く力…
人智を超えた存在と能力…冥王だけが特別じゃない。他の四人の王にも言える事なんだ…)

アレスが冷静に力の差、そして越えられない壁の大きさを実感していると後ろにいたカイが怯えたような声をあげる。

「な、なぁ…もし、こいつに勝てるかなぁ?とか考えてたら魂狩られたりすんのか…?」

「本心からのもんじゃないなら構わんと思うが…俺達は使者だということを忘れるな。万が一にも相手に敵意を持つようなことは考えてはならんぞ!」

「……」

ブラストがカイを戒めるように言い放つ。その物言いにも力が入っているように感じたアレスは余計なことばかり考えてしまう。



その時―――…




『…で、僕に何の用?』





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