狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅢ―ⅷ 先代・悠久の王の言葉Ⅰ
―――中庭を歩き美しい花々を眺めているキュリオと赤ん坊の前に太陽のような色合いの背の高い大輪の花が視界に広がってきた。
「……」
赤ん坊はその花をじっと見つめると、そのまま自分を抱いている綺麗な銀髪の王の顔を見上げる。
「…この花が気になる?」
優しく笑った銀髪の王は腕の中の彼女が良く見えるように、一歩二歩と近づいてみる。
「この花は日の光を仰ぐ習性を持っているんだ。ごらん、みな同じ方向を向いているだろう?」
そこまで言ってキュリオはふと遠い昔を思い出すように目を細めた。そして先代の悠久の王にこの庭園の話を聞いた時の事を思い返す。
『あの太陽のように大きな花は日を仰ぐ習性を持っているんだ。数代前の<ディスタ王>の時代に植えられたものだと聞いている。…どこかの国の王が遥かなる地から持ち帰ったものだそうだよ』
『日を仰ぐ習性…とても珍しい花が存在している地なんですね。持ち帰った王とはどなたですか?』
驚きつつも興味深く話に食いついてくる、まだあどけなさを残す銀髪の青年に当代の王は優しく微笑んだ。
『この花が咲いている地に私たちは行けないのだよ。とある女性がこの花に似たその王に想いを託して贈ったものらしい』
『私たちはそこに行けないのですか…貴方様でも?太陽のようなこの花に似た王に想いを託して…?』
そう聞きながら銀髪の青年はその女性が託した想いがなんとなくわかっていた。そんなことをするのはきっと…愛情表現か何かだろうと。