狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ⅩⅥ―ⅲ "個人差"という言葉に救われて…


キラキラと輝く湯船に浸かると、キュリオはとあることを思い出した。


「アオイが年頃の娘になったら…共に眠り、湯浴みをするのは考えものか?」


うーん…、と顎をおさえながら、まだ女性として未発達の彼女の体を視界にとらえる。下心などあるわけがなくただこの子が健やかに成長し、いつまでもその優しい笑顔を間近で見守ることが出来たら…と考えているのだが、それだけではいけない。


「やはりアオイの部屋と湯殿も必要だな…」


自分で口にしておいて、わずかに寂しさを覚えるキュリオ。


「…これが娘をもつ父親の心境というものか」


今となっては彼女の肉親を探す必要もなくなり、気兼ねなく"この子は自分の娘だ"と公言することが出来ると安心していたのだが…父親として向き合ってみると、早くも別の悩みが持ち上がってしまった。


「しかし個人差というものがある。アオイに限っては常識に該当しないかもしれない…」


"個人差"とはなんて便利な言葉だろう。何とかその意味合いに心救われながらも、しきりに腕を動かして楽しそうに水面を揺らしているアオイに目を向けた。


「日当たりの良いところがいいね。扉はなるべく軽い素材のものを使うとして…私の部屋とあまり離れていない場所がいいな」


キュリオは小さなアオイの腕を優しくなで、「まだとてもじゃないが…どんな扉も動かせそうにないな」と呟くと今しばらくは共に寝起きをすることが出来る喜びをかみしめていたのだった―――


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