狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅦ 誰にも邪魔される事なく…


(…私も軽率だった…)


キュリオは恥ずかしそうにコホンと咳払いをすると、いつものように毅然とした眼差しを向けて言葉を発する。


「ああ、よろしく頼む」


踵を返して室内へと足を踏み入れると、赤子用の足の長い椅子が設置されていることに気が付く。そしてその上に大人しく座っているアオイ。驚かせぬようゆっくり近づくと顔をこちらに向けてニコニコと笑い、キュリオに触れようと彼女その手を伸ばしてきた。


彼女の手が彷徨ってしまわぬよう、手を差し伸べるとやがて触れた互いの指に安心した表情を浮かべるアオイ。


「どんな美しい風景よりお前の笑顔は私の心を震わせる…食事をとるのが惜しいくらい一刻(いっとき)も目を離したくないよ」


赤子用の椅子に両肘をつき、アオイと額を重ねるキュリオ。しかし、いつまでもそうしているわけにもいかず彼はあたためられたミルクボトルを手にし、結局彼女を腕に抱きながら食事を始めるのだった―――



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