狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅧ―ⅸ エデン・永遠の恋人の面影Ⅰ
「…何度も足を運んでいただき申し訳ありません」
悲しそうに視線を下げた彼は女性にも見紛(みまご)うほどに美しく、とても物腰の柔らかい好青年だ。
「いや…恋人を見舞うのは当然の事だからな。大変だと思うが…お前たちも体を休めろよ」
「…お気遣いありがとうございます」
二人はそのまま建物への入口をめざし歩く。そして視界の端に彼女が好きだった背もたれ付きの長椅子が見えた。
「……」
記憶を辿るようにエデンは目を細め…思い出の中の彼女の姿と声を重ねる。
"ここが好きなのか?"
"はいっ!さぁエデン様もご一緒にっ"
彼女の膝枕から見上げた空はとても澄んでいた。しかし…
俺の顔を覗きこんで微笑む少女の瞳はそれ以上に美しかった。