狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ⅩⅩⅦ―ⅱ 女神Ⅱ



キュリオに飛びついたきたこの少女は女神一族の中でもっとも権威のある直系の血筋で、その家の五女にあたる娘だった。そして彼女の名はマゼンタ。あまりにも年若いせいで、王であるキュリオに臆する事なく接してくるのだった。そんな彼女は明るい茶色の髪をリボンで結び、派手なドレスや首飾りはどうみても特別にあつらえたものだとわかるほどに高価なものばかりだった。



小さな彼女は喜びを体全体で表現するようにキュリオの胸元に顔をよせ、先ほどから頬ずりを繰り返している。そしてキュリオは大事な幼子を潰されまいと両手でアオイの体を高く抱え直していた。



「…君は…マゼンタ…」



何も特別だから彼女の名を覚えているわけではない。悠久の民のひとりとしてキュリオはこの者の名を覚えているに過ぎなかった。



しかし…



「嬉しいキュリオ様っ!!わたくしの名前を覚えててくださったのねっ!?」



頬を染めきゃあきゃあと騒ぐ彼女を追いかけ、後方から従者と思われる年老いた男が息を切らせて走ってきた。



「ご、五の女神様…っ!、キュリオ王になんて事…を…っ!!」



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