狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ⅩⅩⅨ―ⅰ 異物Ⅰ



きゅっと瞳を閉じた彼女は一生分の勇気を振り絞り―――…



「私…キュリオ様の事が…ずっと…っ!!」



気持ちが込み上げ、喉の奥を熱くするウィスタリア。すると自然と涙があふれてくる…



「……?」



昂ぶった感情を持て余す彼女を不思議そうに見つめながら、キュリオは怪訝(けげん)な眼差しを向けている。



「…貴方の事が…っ!す…」



とまで言いかけて…
ウィスタリアは言葉を飲みこんでしまった。



―――ガチャ…



「たびたび申し訳ありません。失礼いたします」



広間とテラスを繋ぐガラスの扉が遠慮がちに開き…先程の女官が一礼して入ってきたからだ。しかし、彼女の表情を見ると悪気はないようで…むしろ異様な空気に包まれたその空間に疑問の色を浮かべているようだった。



「…キュリオ様、少しよろしいでしょうか?…大事なお話の途中でしたら改めますが…」



女官は主(あるじ)とウィスタリアの顔を見比べながらオロオロと戸惑いをみせている。


そして、ウィスタリアの尋常ではない感情の昂ぶりにキュリオは何か感じ取ったはずだった。




しかし…




「…大事な話などしてはいないよ。そろそろお帰り願うところだったからね…」





< 324 / 871 >

この作品をシェア

pagetop