狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

XXXIII―ⅵ 仕立屋(ラプティス)・ロイⅠ



アオイを膝に乗せ昼食を口にしていたキュリオの元へと先に報告が入ったのは、白羽の矢が立った馴染みのある仕立屋(ラプティス)が入城したという知らせだった。



ダルドは人型聖獣だが、この仕立屋(ラプティス)はただの人間であるため…何世代にも渡って繰り返し悠久の王とこの城に仕えてきたのである。


彼らはとても器用で手縫いにも関わらず…縫い目がわからぬ程に美しく、生地選びにも抜かりはない。そして一個人に向けらた衣装などはその者の美しさを最大限引き出せる程に出来栄え素晴らしく、下手な装飾で身を飾るよりもよほ
ど良い。

そして数世代前の王の時代に作られたとされる使者の外套も当時と変わらず、痛みなくあり続けている事から…彼らの先祖の腕の良さがうかがえた。



「失礼いたしますキュリオ様。ロイ殿をお連れいたしました」



「あぁ。ありがとう」



扉の内側からキュリオが承諾した声が響くと、家臣の背後から顔をのぞかせたのはロイと呼ばれた仕立屋(ラプティス)の彼だった。



「お久しぶりでございます!キュリオ様!」



丸い眼鏡をかけ、大人しそうな三十代前半ほどの青年が瞳を輝かせながら小走りにやってきた。



すると立ち上がったキュリオは左手に幼子を抱いたまま、握手を交わそうと右手を伸ばす。



「ロイ、急にすまなかったね。元気そうでなによりだ」



差し出されたキュリオの美しい手にロイは両手で受け止め、頬を染めながら頭を下げる。



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