狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅳ―ⅹ 動き始めた感情
それからしばらくして、充分に景色を楽しんだ二人は彼の自室へと戻ってきた。ほどよい眠気が心地よく、腕の中で寝息をたてはじめた幼い天使の寝顔がまた安らぎをあたえてくれる。
「眠りが浅い子なのかと思ったけれど、心配なさそうだね」
ふふっと笑うキュリオの顔はとても穏やかで紛れもなく今、彼の愛情はこの幼子に向けられていた。
キュリオは赤ん坊と向かい合うように横になると、そっと小さな体を抱きしめた。すると…彼女がすがるように顔を寄せ、キュリオの胸元で丸くなる。そのひとつひとつの仕草がキュリオの心の琴線に触れ、この子が他人の子であることを忘れてしまいそうになるのだった。
「…このままお前の親が見つからなければいいのに…」
王としてよからぬことを考えてしまう自分を情けなく思いながらも、
彼にはこの感情を止める術がわからなかった――――