狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅴ―ⅵ 穏やかな朝をもう一度
「ぅー」
(ふむ、これは…)
一瞬考えたキュリオは、小さく声をあげ何かを懸命に訴えてくる彼女を片腕で抱き上げベッドに横になった。
「もう少しこうしていたいんだね?」
キュリオが小さな体をなでながら目を閉じると、幼子は嬉しそうに笑っている。
(二度寝するのはどれくらいぶりだろう…)
思い出せない程、随分昔のような気がする。
もしかしたら王に即位する前かもしれない。王であることに息苦しさを感じたことはないが、彼自身に安らぎを与えてくれる人物がいたかどうかと聞かれればそれはまた別の話となる。
五大国の歴史の中でも妃を娶(めと)った王の話は聞いたことがない。なぜならば…王の妻となったからといって彼らと同じ長い生命が与えられるわけではないからだ。
そして目の前にいるこの世に生まれ出たばかりの小さな命も、いずれはキュリオを残し…その生涯を終えてしまう。