狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

Ⅴ―ⅷ 疑惑



―――二人が二度目の眠りに落ちてしばらくすると…


朝の仕事に勤(いそ)しむ使用人たちの声や足音が聞こえ始め、大臣のひとりがいつもならばすでにこの場にいるはずである王の姿を探していた。

ふと、目の前を通った女官のひとりに声を掛ける。


「キュリオ様をお見かけしなかったか?」


すると、そういえば…と言わんばかりの顔をして彼女は足をとめた。


「ノックしましたが返事がなかったのでまだおやすみになられているのかと」


にこやかに答える女官は動物の耳をモチーフにしたフード付きの可愛らしい服を手に持ち、広げてみせた。


「どうです?可愛いでしょうっ!!」


ポカンとしている大臣だが女官は瞳を輝かせながら小さな服を抱きしめ、恍惚の色を浮かべている。


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