狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのXCⅡ


―――ゴロゴロ…


「…っ…」


暗転し、崩れた夢と共に水色の髪の青年の記憶も暗闇に沈んでしまったが…遠くに聞こえる雷鳴を耳に、ようやく意識が覚醒した仙水。


(…長い夢を見ていた気がする…)


疲れは感じないものの、とある少女から強制的に追い出された彼は、今までの出来事を記憶に留めておくことが出来ずにいた。


「……」


何を思ったか無言のまま両手に視線を投げかけた仙水。自然と腕に残る優しいぬくもりがそれがただの夢ではないことを匂わせる。


仙水はぼんやりしたまま窓に近づき、肩にかかる長く艶やかな髪を払う。やがて…天空から大地へと走る巨大な稲妻を目にし、深いため息をついた。


ここ数十年ものあまり、自力では雷以外の光を発することの出来ないこの暗く沈んだ重い空。しかし、久しぶりに抜けるような青空と、日の光に勇気をもらった気がする。


「優しくあたたかな日の光…」


それが現実ではない事を仙水はこの空を見て理解していた。

そして…


その"優しくあたたかな日の光"が空に輝く太陽ではないことも。



"次の人生はその時を生きるその人のものではないでしょうか?"


"運命って良い事も、悪い事も含めたものの事だと思いますし。どこかで断ち切る方法がなければ、その方は永遠に不幸になってしまいます"



突如、微笑みながらそう答える少女のシルエットが仙水の脳裏に浮かんでは消える。それは彼がずっと誰かに言って欲しかった言葉だった。


夢の中の少女が現実に存在しているのか、求めるあまり…自分の心が作り上げた虚偽の人物なのか仙水にはわからない。


「…ありがとう」


いるかどうかもわからない少女に対し、感謝の言葉を口ずさんだ仙水。この暗闇に包まれた世界の中、わずかな光を見出した彼は穏やかに微笑んでいる。



そして自室から中庭にあたる場所に移動していた九条は眉間に深い皺を寄せながら、目先にある長椅子を見つめ唸るように呟いた。




「…悠久のアオイ姫だと?」





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