狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅧ


とたんに女子生徒たちからは黄色い悲鳴が上がり、彼女らの視線はアランの美しい姿に釘付けとなった。


(…お父様が料理を…?そういえば見たことないかもしれない…)


班に分かれ、後方端の席についているアオイはアランを見ながらぼんやりとそんな事を考えていた。


「今日の題材はカレーだ。包丁を使った事がない者はくれぐれも注意するように」


「はぁーいっ」


普段うるさく、教師の話など二の次である生徒たちもアランのいう事は絶対だった。そればかりか…


「でもぉもし怪我しちゃったらアラン先生手当してくれますぅ?」


などと甘えた発言が目立つのはしょうがないのだろうか。すると…瞳を光らせたアランは


「私が不甲斐ないばかりに、もし君たちに怪我させてしまったら…教師を辞めようと思う」


「えぇえええっ!?どうしてそうなるんですかっっ!?」


些か大げさなアランの物言いだが、彼女らの気を引き締めるには十分な効果があった。皆、アランを辞めさせまいとくだらない考えを捨て懸命に取り組み始めたからである。


「聞いた?今日カレーだって。これなら作り慣れてるから案外いけるかもだね」


「…だな。小学生でも作れるようなやつ出してきやがったなアランのやつ。もっと別なもんにしてくれりゃいいのに…」


「……」


ミキとシュウの言葉を傍で聞いていたアオイはただ無言のままだった。


(カ、カレー…。おいしくて大好きだけど…作った事がないのは私だけなのかな…)


「ん?どうかした?アオイ」


カレーと聞いて黙ったままのアオイの顔を覗き込んだミキ。


「う、ううん?カレーおいしいよねーって考えてたところ…」


「へ?今から作るのに、もう味の事考えてたわけ?」


「そういえば…お前朝飯食ってきた?」


「ううん、家を出るのは遅かったから…今日も食べてないや」


「あれ?アオイんちってどこにあるんだっけ?結構遠くにあるってしか聞いてないけど」


ミキの突っ込みにアオイはドキリと背中を震わせた。


「あ、えっと…隣りの、隣りの…隣町かな…?」


「えぇっ!どんだけ遠いのよ!!」


アオイの言葉に指折り数えたミキが驚きの声をあげる。


「ミキ、声でけぇよ。あんま大声だすとまたアランに…」


三人の視線が前に向けられると…


「…何か言いたい事がある子がいるようだね」


アランの視線はやはりこちらに向いており…


「はい、どうぞアオイさん」


『やっぱり!!』


シュウとミキがアランに突っ込みを入れている中、隣りにいるアオイは苦笑いを浮かべている。


「せ、先生好みのカレーを作れるように…が、がんばりますー…」


「ありがとう。期待しているよアオイさん」


「は、はい…」


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