狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅨ
上機嫌な様子のアランは野菜の切り方をはじめ、火にかけるタイミングなど事細かく説明していく。
「ねぇ、カレーって一番最初に習わなかった?小学生の頃の話だけどさ。野外授業でも作ったよね」
「確かに…。あれじゃない?この中にすっごいお嬢様がいて、包丁も握ったことがなくてって…その子を気遣ってるとか?」
「あーそっかぁ…王立の学園だもん。そういうこともありえるか…」
アランの授業に不満があるわけではないが、やはりこの年齢にして料理の授業が改めてカレーともなると…皆ある程度疑問が残るらしい。
(カレーって小学校で習うお料理なんだ…。アレスとのお勉強でお料理はなかったから…私初めてだわ…)
「頑張って皆に追いつかなきゃ…」
気合を入れて腕まくりをしたアオイは、見よう見真似で泥のついたじゃがいもを洗い始めた。
「ん、じゃがいもはそれくらいでいいよアオイ。にんじんの皮むいてくれる?」
「うん。わかった」
しかし…包丁を握り、にんじんと睨めっこするアオイ。
(にんじんの皮…皮をむけばいいのよね)
ゴクリと喉を鳴らしたアオイは覚悟を決めてにんじんへと包丁を這わせる。
「アオイさん、これをお使いなさい」
背後から声がして、姿を現したアランの手に握られているのはピーラーと呼ばれる皮むき器だった。
「アラン先生…」
アランはアオイの体を包み込むように手を重ね、スルスルとにんじんの皮をむいていく。
「わぁっ!お料理って包丁だけじゃないんですね。こんなに便利な道具があるんなんて…」
感激しているアオイの手を離したアランは優しく微笑みながら、今度はひとりでやってみるよう彼女に促している。
「そう…力を入れずに。撫でるようにでいいんだ」