狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのLXXXⅠ

―――キュリオは長い足を組み、中庭に咲き誇る数多の花を背に口を開いた。


『ふふっ
せっかく二人きりになれたというのに…お前の興味は至る所にあるようだね』


裸足のまま敷石の上を歩き回り、華凜に咲く花々に目を奪われながらも時折キュリオを振り返るアオイ。


『きゃぁっ』


彼女はとてもご機嫌な様子で輝くような笑顔をこちらに向けてくる。言葉はわからないが、素直なアオイの表情から


"見てくださいおとうさまっ!きれいなお花がたくさん咲いてますっ"


と言っているに違いないとキュリオには確信があった。


『あぁ、本当に綺麗だ…』


そう答えたキュリオの瞳はアオイだけを視界に捉えている。


やがて東屋をひとまわりした彼女が戻ってくると、まるで問うような…きょとんとした瞳がキュリオの顔を覗きこんだ。


"おとうさまは何をしているの?"


見るものすべてに瞳を輝かせて喜ぶアオイには、キュリオがなぜこの素敵な景色を見て平然としていられるのか不思議なのかもしれない。


『うん?もちろん私も楽しんでいるよ。お前を見ているだけで十分にね』


すると…パチクリと瞬いた愛らしい瞳。複雑な言葉の組み合わせはまだ、アオイには理解できていないようだった。


『しかし困ったな…アオイの好きなものが増えていく一方だ』


『……』


無言のままキュリオの顔を見上げているアオイ。


『あたたかいミルクに…花や蝶。楽しそうな話声と…そこに咲く人の笑顔…』


『……?』


やはり気になる言葉が出てきたのか、こちらへと一歩近づいたアオイ。わずかに見開かれた目を丸くして小首をかしげている。


(残念だが…幼いうちは特にアオイの意識をこちらに向けるのは難しいようだね)


ほんの少し陰りのある笑みを浮かべたキュリオだが、言葉を待っている彼女の頭を撫でながら口を開いた。


『次は…私の好きなものを教えよう』


『それはお前だよ』


『…っ!…』


微笑んだキュリオの幸せそうな顔がただ嬉しくて、アオイは甘えるように彼の足元に絡みつく。


すると突然視界が彼の頭上を越え、抱き上げられているのだと気が付いた。


『愛に順位などつけてはならないと思っていたが…』


『……?』


『紛れもなく私の一番はお前だ』


抱き上げられていた腕を下げられたらしく、アオイの視線とキュリオの視線が優しく交差する。


『…これは王として有るまじき事かもしれない。しかし…私の心はもう止まらない』


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