狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

その32


「…お母さま?」


「え…?」


「お母さまーっ!!」


幼い少年に勢いよく飛びつかれ、戸惑うアオイ。

すると…


「さがしたんだよーっ?どこに行ってたの?お父さまも待ってるからはやくいこう?」


捲し立てるように急かされ、アオイは戸惑いながらもしゃがんで小さな少年と視線を合わせた。


(どうしようこんな時に…迷子かな…でも、どこかで見覚えがあるような…)


「えっと…ごめんね?僕…お姉さんはお母さまじゃな…」


申し訳なさそうに口を開いたアオイだったが、少年は聞く耳を持ち合わせていないように顔だけを後方のカイへと向けた。


「あのひと怪我してるの?」


「う、うん…そうなんだ。だから私、すぐ手当してくれる人を探しに行かないと…」


「ふーん?じゃあお父さまのところに行けばカイケツだねー!」


「…僕のお父さまが近くにいるの?」


ぐいぐいと手を引かれ、アオイは少年とともに駆け出した。


「アオイ様っ!俺は大丈夫ですから!!いますぐにお戻りください!!」


「カイ、そこで待っていて!すぐに戻るから!」


「…っ…いけませんっ!!アオイさまっっ!!」


遠くにカイの声を聞きながら、あたたかい少年の手のぬくもりに首を傾げるアオイ。



(…この子…誰だっけ……)




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