狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

その58

「すまない…アオイさん、キュリオ…」


予想していなかった最悪の結末。いたずらに理想の世界を創造してしまったセシエルは大きな過ちを犯した。

彼に呼ばれて現れたのは幻の妻・アオイではなく、キュリオとともに悠久を生きる実体のアオイだった。

先代・悠久の王セシエルは"異空間"を創りだした術そのものを解除しようと両手を合わせ、頭上に新たな光の渦を発生させていく。

すると、先ほどまで騒いでいた生徒や幼いキュリオの姿は消えて…


(傷ついた彼女が夢から覚めたとき…どのような影響を与えるかわからない…強烈な痛みを受けたこの世界に魂が囚われぬ事を願うばかりだ)


セシエルを包む光が一層強くなり、全てが蜃気楼のように揺らいでは光の渦の中へと吸い込まれていく。


「いくぞ…クジョウ、センスイ」


アオイを一瞥したヤマトはセンスイの腕を引き、立ち上がらせるが…


「…なぜ…なぜ彼女を……」


ヤマトの手を払い、俯いたまま力なく言葉を発するセンスイ。


「あの娘に入れ込み過ぎなのだと…いい加減気づけ。お前らしくない」


「……」


無言のまま動く気配のないセンスイにヤマトが大きくため息をついた。


「クジョウ、あとは頼む」


「…わかった…」


アオイを全否定するヤマトに対し、クジョウは彼ほどではなかった。

普段穏やかなセンスイがこれほどまでに執着する少女に不思議な縁さえ感じていたからだ。



「…今は奴らに任せるしかない。戻るぞ…」



「…えぇ…」



(…何度味わえば…)





―――この苦しみから逃れられるのだろう―――…





キュリオの腕の中でぐったりとする蒼白のアオイ。

瞳の奥にその痛々しい彼女の姿を焼き付けると…センスイはまるで心へ蓋をするように瞳を閉じた―――。


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