狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

その64

「…アオイ?」



キョロキョロと彼女の姿を探すキュリオ。
アオイが横になっていたはずのベッドには遠くを見つめるセシエルの姿があった。



「…彼女は帰ってしまったよ。いや、帰した…というのが正しいかな」



「帰したって…ど…」



"どこへ?"と言葉を続けようとしたキュリオをセシエルの瞳が制した。



「お前の待つ未来にさ」



「……」



セシエルやアオイの言葉を信じていなかったわけではない。



しかし、どこかで願っていた―――。



このまま彼女が幼い自分やセシエルと共に歩む未来を期待していた自分がいたのだ。



己の心と向き合い、ようやく使えるようになったこの初級魔法。


だが…見せる相手がいなくなったとたん、それがひどくちっぽけで意味のないものに思えるから不思議なものだ。



「さよならも言わせず…すまなかったね。こうなってしまった原因も結果もすべて私にある」



「い、いえ…」


(アオイがいない日常…ただ普段通りの生活に戻るだけだ)


強く自分に言い聞かせようとしたキュリオだが、突然現れ…突然消えてしまった彼女に想いは募る。


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