狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

Ⅷ―ⅱ 魔導師と剣士



そう言うのは濃いグレーの短髪と瞳に、眼鏡をかけ…身長はそれほど大きくはない細身の男で、名はテトラという。年齢や階級で人を差別するようなことがない彼は年下のアレスにも人当たりの良い笑顔をみせた。


「はい!先輩!!今日はお願いがあって参りましたっ!!」


元気よく答えたアレスはキュリオとガーラントの許可は得ている旨を伝え、テトラも快く了承する。そして、彼とともに研究室にいたもうひとりの魔導師の協力も得てガーラントと落ち合うのだった。



アレスが魔導師2人の協力を得てキュリオのいる広間に面した通路を歩いている頃、ガーラントは剣士の集う棟を歩き鍛錬の間の傍までやってきていた。


この世界では1人の人間が2つの能力に秀でているという事実は王以外例がない。稀に魔導師の中に剣が扱えるものもいるが、その腕前は到底生粋の剣士には叶わないのだ。よって、剣士と魔導師が共に行動することは互いを補う上でとても効率がよい。


(ふむ。この機会に剣士の若いもんを連れて行くのもよかろう)


ふとアレスの姿を思い浮かべ楽し気な笑みを口元に浮かべたガーラントは、風に乗って流れてくる気合に満ちた剣士たちの声に耳を傾けた。



< 80 / 871 >

この作品をシェア

pagetop