狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

狙われた"大和撫子"

そこに記されたいたのは彼女が働く料亭の名だった。


「んー…火事のたんびに飛び出して行く姐さんかっこよかったですよ?しかも尋常じゃない速さであっという間に鎮火して戻ってくるなんてまるで天女様みてぇだった…」


「…何が言いたい…」


「いやね、あっしの目的はこの街を火の海に包んでやる事なんですがね…姐さんがいる限りこれは無理なんじゃねぇかって思うようになって!じゃあ一緒に燃やしちまえばいい!!って思いつきましてね!!」


得意げに胸を張る男に"大和撫子"の眉間に皺が寄っていく。


(こいつヘラヘラ笑いやがって…愉快犯か)


女は傍に転がった番傘に手を伸ばそうとするが…


「あぁ!そいつを武器にしようったってそうはいかねぇっ!!」


男は懐から取り出した小瓶と提灯を近づけ…


「これはうちの店の油だ!なんでも火の威力を何倍にも上げてくれる大層な代物らしいですぜ!?」


「まぁ…動こうと止まっていようと姐さんは綺麗に火葬してあげますんでご安心を!」


まるでうっとりと酔狂するような表情を浮かべた男はあっというまに手にした提灯へと油を注いだ。


「…よせっ!!」


慌てて手を伸ばした彼女の制止も虚しく…


「ほぅらよっっと!!」


あっというまに燃え盛った提灯は巨大な火の塊となって家の扉へと直撃してしまった―――。


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