狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

悲しい再会Ⅳ

「…はい?」


「…っ生きていてくれて…本当に良かった…っ…」


青年の震える声に違和感を覚えながらもアオイは微笑んで答えた。


「…?はい!大和撫子さんに助けて頂いたおかげで…」


とまで言いかけたアオイの表情がわずかに曇る。


「…どうかされましたか?もしかしてお怪我でも…」


そういうのも声をかけてきた青年の顔が今にも泣き出してしまいそうなほど苦しそうに歪められたからだ。

駆け寄ろうとするアオイに静かに首を横に振って意志を示す青年。



「……」



(どうしてそんなに悲しそうなお顔…)



「…そう、ですか…」



怪我をしていないという意味合いのはずだが、なぜか近づくことを拒絶されたように感じたアオイの足はその場に留まることを選んだ。



「貴方が忘れてしまっても…私が覚えています。例え…この世界でしか巡り合うことが許されなくとも…」



「…この世界?」



一瞬、彼が何を言っているのかわからず、人違い?とさえ思ってしまったアオイだが…青年の表情からそれが単なる勘違いの類(たぐい)とは到底思えなかった。


「…やっぱり…私が覚えていないと大和撫子さんが言ってたことと何か関係があるのですか?」


「……」


不安そうに胸元で指を組んでいるアオイに無言を貫く青年。少女の表情は硬く…自責の念を抱いていることは明らかだった。



「…私が…」



ゆっくり口を開いた水色の髪の青年の瞳がより一層悲しみの色を深め…






「…貴方を忘れられないだけです」






(そう…これは彼女に逢いたいがために見た、私だけの夢―――…)




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