狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

仙水の想いⅡ

「…っ…」



九条の問いに仙水は何も言えず口を噤んでしまった。


「……」


そして再び俯いてしまった彼の行動が全てを物語っている。


「…人の命は短い。お前の命から見ればあの娘の時間は一瞬のものだと思え」


それだけを言い残すと九条は仙水の部屋を出て行ってしまった。



(…つかめそうで掴めない…)



仙水は傍を流れる清らかな水に左手を浸し、煌めく水をその手ですくいあげた。…が、わずかな指の隙間からも零れ落ちる雫はほとんどその手に残らず…



「…共に…その命を全う出来たら…私は……」



(キュリオ殿…彼女の命から目を背けることの許されない貴方は一体どうなさるのでしょうね―――…)



―――ポタポタ…



仙水の手元を濡らすのは彼の部屋に流れる清らかな水なのか、それとも彼の涙なのかわからない。


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