狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

蕾の見る夢Ⅱ

「はっ!実は…」



家臣の男は一枚の報告書を王に手渡すと、その写しを静かに読み上げる。



「…まだ年端もいかない若い娘が夜明け前に亡くなったという知らせが入りました。少女の名はトモミ。王立学園の教師を目指していた真面目な学生だったと記述にあります」



「死因はなんだ」



わずかに顔を曇らせたキュリオは手元に落とした視線を若い家臣へと向ける。



「それが…まだ不明ですが、恐らく急性の心の臓の発作ではないかと…」



「…だろうな」



いくらキュリオの癒しの力が万能だからと言って、これから異常が起きるであろう場所を見越して治療するということは不可能だからだ。



「花を贈ってやれ。その少女が好きだった花をいくつでも」



「畏まりました」



キュリオの命令を受けた男が静かに広間を出ていくと…



「蕾(つぼみ)のまま散ってしまった花が幸せな夢の続きを見ていることを今はただ願うばかりだ」





「…来世ではきっと大輪の花が咲くと信じたいものだな…」





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