薫子様、一大事でございます!
そして、そのまま店の外へと連れ出されたのだった。
私の両腕を掴んで顔を覗き込む。
「何をしようとしているのか分かっているのか?」
「ですから、井上さんに――」
「調査対象に話しかける探偵がどこにいるんだよ」
「……そうなんですか?」
北見さんが頭を抱えた。
分からないことは直接聞いた方が早いかと思ったのだけれど……。
「星野さんの立場は?」
星野さんの立場……?
突然の質問に言葉を失くす。
「俺は井上さんをクロだとは思ってるけど、もしも違った場合どうする? 探偵に浮気調査を頼んだことがバレるんだぞ? 丸く収まるものも収まらなくなるじゃないか」