薫子様、一大事でございます!

「帰るぞ」


北見さんが歩き出す。


「えっ、でも……」


芙美さんと滝山がまだ……。


「いいんだよ。二人の策略だ」


……策略?

一体何の?


立ち止まったままの私の元に、北見さんが戻ってくる。


そして、サッと取られた手。


――え!?


北見さんは、私の手を引いて歩き出したのだった。


「浴衣着てるんだし、せっかくだから少し散歩でもするか」


こっそり見上げた北見さんの横顔は、私の見間違いかほんのり赤かった。

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