薫子様、一大事でございます!
「まぁ、拒絶するようなことがあれば、少々手荒なことをしてもいいとは指示していたのですがね」
悔しさに唇を噛み締めた。
「さすがはお嬢様。人を疑うということがない。いやぁ、純真無垢で何より。僕の花嫁に相応しい女性は、やはりあなたしかおりません」
薄くなってほとんどない髪の毛をかき上げる仕草に悪寒が走る。
こんな人のお嫁さんなんて、絶対にイヤ!
「お願い! 降ろして!」
「無理ですって言っているでしょう? 薫子さんはこれからずっと僕と一緒です。やっと見つけたんですから」
「イヤです! あなたと結婚なんてしません!」
「そんなことを言わないでくださいよ。こんな僕でも多少なりとも傷つきます」
「だって、私か会社か、そのどちらか一方だったはずでしょう?」