薫子様、一大事でございます!
ここに来て助けられることばかり。
もしもあの夜、北見さんをここへ連れてこなければ、私はDCHと結婚する羽目になっていたかもしれない。
所詮“たられば”に過ぎないけれど。
「もうあんまり心配させるな」
「……はい」
北見さんの目に優しい色が灯る。
「……一緒にいて……くれるんですよね?」
その目の奥を覗き込むように恐る恐る訊く。
北見さんは真っ直ぐ私を見つめたまま、口元に笑みを浮かべた。
「……あぁ」
ゆっくり近づく北見さんの顔。
どうしたらいいのか分からなくて、身体が強張る。
増える瞬き。
すると、私の額を北見さんがぺチンと軽く弾いた。
「――っ」
「こういうときは目を閉じるんだよ」
あっ……。
慌ててギュッと瞑った瞼に、キスがひとつ。
それから、硬直したままの私の唇に北見さんの唇が重なった。