弟、時々恋、のち狼

ふいに、クラクラと目眩に襲われた。

気のせいかと思ったけど、違う。
続いて襲った全身を締め付けられるような圧迫感と息苦しさに、思わず喘ぐ。


「大丈夫。すべてがあるべき姿に戻るだけだから……」


悟りきったようなロウの声が弱まった。
きつく抱き合ったアタシにだからこそ聞こえる吐息が、


「このまま消えてしまいたい」


そう呟く。


……あぁ……。

ロウも、この愛を惜しんでくれてる。


頬を温かな涙が伝った。
アタシたちは、想い合ってる。


息苦しさに薄れていく意識の下、アタシは幸せに微笑んだ。

アタシたちは……大丈夫。


「愛してる」








< 253 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop