弟、時々恋、のち狼

枝の間に見えないかな。


物珍しさに、見上げながら、近づく。



「…………あれ?」



驚きに、声がもれた。


視線をずらした瞬間、見つけたものは…………桜の木の下。

うぐいす、ではなく。


ツカサ……くん?


ほぼ反対側。
幹にもたれるようにして、忘れるはずのない、制服姿の彼が立っていた。

みんなと同じグレーの詰め襟。光沢のある色合いと隠しボタンは、学ランに似ているけれどまったく違う。
女子の制服ーー黒ブレザーにグレーとピンクのチェック柄スカート。首もとには蝶のかたちのピンクのリボンーーも人気は高いけれど、男子の制服は老若男女問わず絶大な人気がある。

でも。

ツカサが着ると、全然違う。
他の男子なんか目じゃない。

似合いすぎるほど、似合う。

彼の周りの雰囲気は、おそろしいくらい静かで、大人びていた。


アタシは男の子なら全員近寄りがたいけど、きっと、ツカサくんはアタシじゃなくても近寄りがたい。

オーラが、違う。


……忘れ物、かな?


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