弟、時々恋、のち狼
「じゃ、またね」
恋愛対象探しに情熱を燃やす詩織は、意気揚々と獲物を探しに出かけて行った。
アタシは、ちょっとあっけにとられた思いで見送ると、それでも、なんだか明るい気持ちで外に出た。
今日も、暖かな日差しに心地良い春風がそよいでいる。
「んー……」
思わず、大きく伸びする。
ほのかに甘い空気が体中に優しく広がった。
ホー、ホケキョ
この辺りでは珍しく、うぐいすが来ているらしい。
あの、細い桜の木だろうか。
花は、まだ三分咲き、というところ。
校庭の他の桜は満開なのに、あそこだけ校舎の陰になっているのが悪いのかもしれない。