インセカンズ
「ほら。そこ座れよ、アズ」

焦れ込む安信は、ソファを指差して緋衣を座らせると自分も隣りに腰下ろす。

「アズ。つまり、俺は何を言いたいのか分かる?」

安信は、デニムのポケットに突っ込んできたソムリエナイフでキャップシールに切れ目を入れながら、ちらりと緋衣を見る。

「……たぶん、私の勘違いでなければ、両想いってことでいいんですよね……?」

緋衣は恐る恐る安信の顔色を窺いながら口にする。すると、安信は途端に吹き出す。

「両想いって、何だか懐かしい響きだな。そうだよ、それ。だから、別れる必要なんてないだろ。ていうか、付き合うのはこれからか」

安信は、手際よくコルクの処理をするとグラスに白ワインを注いでいく。

グラスの一方を緋衣に持たせ、もう一方を自分で手にした安信は、「乾杯」と言ってグラスを合わせる。そして、

「アズ。俺と結婚を前提に付き合えよ」

不敵な笑みを浮かべて言うと、緋衣の肩を引き寄せた。

「えっと……、」

腕の中で身体を固くしたまま目を何度もしばたたかせる緋衣に、安信は不満気に口を開く。

「何だよ? 何か不服でも?」

「いえ……。展開が早くて頭が付いていかないだけです。一先ず、ハッピーエンドってことですか?」

「エンドじゃねーよ。これから始まるんだって言ってるだろ」

安信は、わざと自分の額を緋衣のそれにゴツンとぶつけて、至近距離から彼女を見つめる。

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