メランコリック
「おまえが接客の声が小っせぇから、体力つけてやろうと誘ってんだろ?人の好意は素直に受け取れ、バカ」


相良がいつもの苛々した口調で言う。


「声が小さいのは……ごめん。相良くんがそう言うなら、もっと気をつける。焼肉は……お肉もお店の煙もニガテだから……」


誘われたことがない人間にとって、誘いを断るのは難しいことだった。
なんて言えばいいのかわからない。
普段のようにばっさり切ることもできない。

私の曖昧な拒絶が、それでも相良にはちゃんと伝わったようだ。
不機嫌な顔がより不機嫌になり、次に馬鹿にしたような笑いに変わった。


「じゃ、せいぜい、今夜は死ぬほど食って明日はでかい声で挨拶しろよ」


誘いを断ったことを怒っている。それはわかる。
でも、私も嘲笑われに行くつもりはない。
ただ、相良を刺激してもつまらないので、素直に頷く。


「わかった、そうする」


「素直じゃん。俺の言うことはだいたい聞くよな、おまえ」

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