メランコリック
「そういうんじゃないんで」


私は言った。言葉も寒さで震えていた。
参ってしまう。私が面倒事を避けようと空気のように過ごすのは習性だ。今まではこれでどうにかなってきたのに。
相良主導のいじめにおいては、私の無口も無表情も彼らの怒りを増させる材料になってしまう。


「認めないんだ」


ひとりが言った。彼女は確か私と同い年のはず。
じゃあ、24歳じゃん。何やってんだろ、成人してるのにやり口が思春期レベルだ。


「じゃ、少し素直になるように、改造してあげるよ」


彼女の手にはハサミ。スタッフルームの文房具入れにあったやつだ。
それを私の左耳の真横に差し入れると、ジャキンという音を響かせる。

頬にかかる髪の束。冷たいハサミの感触。
私は自分の髪が切られたことを知った。


「鏡見るたび、反省できるようにさ。うちらが見た目変えてあげるよ」


「ははっ、ヤバ!この方が顔見えんじゃん」


二人が笑う。そして、もう一太刀、私の毛束を切り落とした。
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