甘い時 〜囚われた心〜
勇馬の後ろから、小さな少女が出てきた。

薄いピンクの着物に、小さな白い花が散りばめられた模様が、少女に似合っていた。

黒髪は肩の所で、揃えて切られ、日本人形のようだった。

白い肌にパッチリとした目・赤く色づいている唇。

桜華は、少女に目を奪われていた。

「今日は、そちらも、息子さんをつれてこられると聞いたのでね。私も愛娘を自慢したくなりましてね」

さっきまで、冷たかった瞳が、少女に向けられると、フッと柔らかくなる。

二人は席に着いた。

「桜華…」

百合矢に呼ばれ、ハッとすると慌てて自己紹介をした。

「初めまして…桐生院 桜華です」

軽く頭を下げる。

「息子さんは、なかなか優秀なお子さんのようですね」

「いやいや、まだまだですよ。一人息子なので、甘やかした部分がありますのでね…」

(どこがだよ!)

百合矢の言葉に、イラ立っている。

「桜華君は、何年生かな?」

「小5になりました」

「ほぅー、うちの子と同じだね…雛子、お前も挨拶しなさい」

勇馬の横で、ポーッとしていた少女が、ハッとした。

「あっ…神楽 雛子と申します」

雛子と名乗った少女は、ニッコリと可愛らしく桜華に微笑みかけた。
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