甘い時 〜囚われた心〜
雛子は泣いていた。

自分の気持ちが混乱しすぎて、分からなくなってしまった。

流れる涙が、ソファーに落ちる。

隠すように、ソッと体を丸めた。

雛子が動いたのに気づいた桜華が、チラッと見る。

「っ!」

泣いてるのに気付き、慌てて立ち上がった。

「雛子!どうした?どこか痛いのか?」

側により、抱き起こす。

雛子は、ユックリと首を横に振った。

「どうして泣いてるんだ?」

ただ、雛子は首を横に振るだけ。

少し困った顔をして、雛子の涙を人差し指で拭き取る。

「怖い夢でも見たのか?…泣くなよ…」

ソッと雛子を抱き締めた。

フワリと香る優しい甘い桜華の香り。

包まれ、瞳を閉じた。

『優しくしないで!』

言いたくても言えない…

桜華の優しさが嬉しくて、甘い香りが心地よくて、桜華の背に手を伸ばしていた。
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