甘い時 〜囚われた心〜
盟和女子での学校生活は、平和で、楽しかった。

雛子の回りには、いつも美奈子達がいてくれて、おっとりしていた雛子のことも、よく気にしてくれた。

優しく明るい美奈子が大好きだった。

使用人なんかと自分を笑う美奈子の姿なんて知らなかった。

すべてを失った雛子にとって、美奈子達との思い出は大切だったのに…

もう、雛子は3人を見ることさえできなくなっていた。

カクンッと膝の力がなくなり、倒れそうになる。

篠原が間一髪の所で支えた。

「雛子ちゃん、大丈夫か?車に入ろう」

篠原の言葉にも答えない。

「お嬢様方、少し…」
『言い過ぎじゃないのか?』そう言いかけて、美奈子達の後ろに立っている人に気づく。

ゆっくりと頭を下げた。

「何をしてる?」

低い声が響いた。

3人は、突然の声の主を確かめるように振り返った。

立っていたのは桜華と尚人だった。

彼女達は、桜華を見るなり、態度を大きく変えた。

「桐生院様っ」

「わざわざ、迎えに来てくださったのですか?」

ニコニコと、最高の笑顔を見せる。

そんな彼女達を見もせず、スタスタと雛子の側に歩いていった。

「雛子…」

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