甘い時 〜囚われた心〜
目が覚めると、自分への皆の態度が、ガラリと変わっていた。

『さん』付けから『様』に変わっている。

まるで、令嬢の様な扱い。



「?何か不満か?」

皆の態度に疑問を抱き、桜華に相談すると眉間にシワを寄せながら言った。

「お前は、俺の女になったんだ。今までの様な使用人として使える必要はない」

「で、でも!私は、桜華に買われた身だし、それは返していかなくちゃっ」

「使用人として俺の側にいたいのか?」

「……違うよ…でも…」

床に視線を落とした雛子を抱き締める。

「俺は、俺の女として側にいて欲しいんだ…甘えて欲しいし、我儘だって言っていい…」

「桜華…」

抱き締める腕の力を強める。

「桜華…ありがとう…でも、私は借りた物は返したい。それはいけないこと?」

「いや…」

「桜華の側にいたいから…もうお嬢様じゃないから…少しでもマイナスな物は無くしたい…」

潤んだ瞳が見上げてくる。

「側にいたいから、何もしないわけにはいかない……んっ」


雛子の唇を奪う。

甘い吐息が漏れた。

「…なんで完全に俺の者になんねーんだよ…」

雛子に向ける桜華の苦しそうな顔。

「桜華…ごめんね……お嬢様じゃなくて…ごめんなさい…」

雛子の瞳から涙が溢れた。

桜華の瞳にも涙が…






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