甘い時 〜囚われた心〜
「桜華…ちょっといい?」

帰ろうと玄関に向かう桜華達を鈴音が呼び止めた。

「あぁ…」

「話があるの」

「俺も…話がある。尚人、雛子と先に行っててくれ」

「はい」

ただジッとしていた雛子に、軽く微笑みキスをする。

「すぐ行くから」

雛子は、コクりと頷いた。


二人は、雛子達が見ている中、消えていった。

「いきましょうか」

尚人の言葉に、頷いて着いていく。

(鈴音さん…桜華の許嫁…やっぱり、私が側にいたら…嫌だよ…ね…)

ずっと考えていたこと。

ずっと考えないで避けていたこと。

桜華とは、いくら好きでも結婚という未来はない。

御曹司である桜華に、自分が釣り合うわけがない。

桜華には、鈴音という許嫁もいる。

好きになってもツライだけなのに、分かっていても止められない。

フッと、足を止めた。

「雛子様?」

いくら、止めてと言っても、尚人は様付けを止めてくれなかった。

今では、諦めている。

「鈴音さんは…」

雛子の言葉に、静かに耳を傾ける。
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