無垢な瞳
「でもね、美佳子は14歳だから、美佳子の方がお姉ちゃんになるんだよ」

父がすかさず説明を入れた。

「そうなんだ、知らなかった」

美佳子は嬉しそうにはにかんだ。

この美佳子という少女は、この世でたった一人の姉なんだ。

僕は不思議な気持ちで満たされた。

「はじめまして、美佳子ちゃん」

僕が話しかけると、美佳子は嬉しそうに言った。

「私たち兄弟よね」



「さよなら、父さん」

これで本当にお別れだ。

でもこれで本当に父さんから卒業できる。

父さんは帰るべきところに帰ったんだ。

ただそれだけ。

僕は改札で見送る二人に手を振りながら、つぶやいた。
< 101 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop