無垢な瞳
「やっぱ、電話してよかったわ。あんたのことだから大丈夫とは思ってたんだけど、万が一ってこともあるからね。私、さえてるわ!」

幸は得意げに言った。

「違うの、母さん」

「やだあ、何ぴりぴりしてるのよ」

「今日の午後、ケンから電話が来ることになってて、だから私、家から離れないの。でも、父さん携帯持っていないし、私どうしたらいいか‥‥」

「ちょっと、マジで?」

「どうしよう」

「ああ、もう!これって虫の知らせっていうの?なんか、いやな予感がしたのよ。わかった。私が今から池袋に行ってくるから」

「いいの?母さん」

「いいって、仕方ないでしょ。なんで先週の時点で言ってくれないのよ」

「だって、母さん、父さんと関わりあいたくないって‥‥」

「ああ、言ったわね。そうよ、そのとおり。でも携帯もない相手を待ちぼうけさせておくのもねえ‥‥」

「母さん‥‥」

「わかった、あんたは家で彼氏の電話待ってなさい。あとは私がなんとかするから」

「彼氏じゃないって‥‥」

「いいわよ、そんなのなんだって!」

母は電話を切ってしまった。

母さん、ありがとう。
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